Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2018.10.17

プレスリリース

ナノカプセルを貫く分子のひもを発見

混ぜるだけで組み上がる 新たな貫通型ナノ構造体

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の山科雅裕博士研究員、草葉竣介大学院生(修士課程2年)、吉沢道人准教授らは、ひも状分子のオリゴエチレンオキシドが、ナノカプセルに2つの様式で結合することを発見した。短いひも状分子はカプセル空間に内包されたが、長いひもはカプセル骨格を貫通した構造を形成した。分子カプセルとひも状分子を使った「貫通型ナノ構造体」の初の作製例であり、新たな分子機械や機能性ポリマー材料の開発が期待される。

酵素のタンパク質ポケットや合成カプセルの空孔はサイズや形状に依存して基質分子を結合するが、空間サイズより大きな基質は立体的に結合できない。特に、両親媒性ひも状分子のオリゴエチレンオキシドは幅広い分野で利用されているが、弱い相互作用のため、基質分子としての活用はほとんど未開拓だった。これまで非結合性と考えられていたこのオリゴマー分子が水中・室温で、瞬時かつ定量的に、ナノカプセルと結合することを見出した。結合様式は基質の長さに依存し、約3 nmまでのひも状分子はカプセル内部に包み込まれ、それより長いひも状分子はカプセル骨格を貫いて結合した。詳細な熱量分析から、この前例のない貫通型ナノ構造体の形成は、カプセル内面とひも状分子の多点相互作用が駆動力と判明した。

研究成果は株式会社リガクとの共同研究によるもので、10月12日付(英国時間)でNature Communications誌オンライン版に掲載された。