Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2018.10.17

プレスリリース

相同組換えのDNA鎖交換反応開始の分子機構を解明

Swi5-Sfr1によるRad51のDNA結合制御

東京工業大学 科学技術創成研究院の岩﨑博史教授、伊藤健太郎研究員、黒川裕美子研究員、国立台湾大学の李弘文教授(Pro. Hung-Wen Li)、台湾国立中央研究院の冀宏源准教授(Assoc. Prof. Peter Chi)等からなる国際研究チームは、DNA相同組換えの中心的な反応である“DNA鎖交換反応”をつかさどるDNA―Rad51タンパク質複合体形成制御のしくみを世界で初めて明らかにした。

相同組換えは、全ての生物で起きる生命現象で、傷ついたDNAの修復や遺伝的多様性を生み出すのに必須の働きをしている。相同組換えは、似た配列を持つ(このことを“相同”という)DNA鎖の交換反応が中心的な反応で、Rad51リコンビナーゼによって触媒される。

Rad51は、1本鎖DNAにらせん状に結合したフィラメント構造を作る。この構造体は、相同二重鎖DNAを検索してDNA鎖の交換を触媒する。しかしこの構造体は、かなり不安定であり、補助因子Swi5-Sfr1タンパク質複合体によって安定化される必要があるが、どのような分子機構でフィラメント構造が安定化するのか不明だった。

本研究では、フィラメント一分子をリアルタイムで観察することで、Rad51が1本鎖DNAへ結合・解離する過程を解析してSwi5-Sfr1複合体がRad51の解離を抑制しフィラメントの安定化を促進することを世界で初めて示した。

この成果は、10月8日(米国東部時間)付けの『Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA(米国科学アカデミー紀要)電子版』に掲載された。