Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2024.05.23

プレスリリース

ゼオライト触媒におけるCuサイトと酸サイトの位置関係がメタン転換反応に与える影響

メタンとN2Oからメタノール、炭化水素を生成する手法の開発に貢献

東京工業大学 科学技術創成研究院 ナノ空間触媒研究ユニットの横井俊之准教授と肖佩佩特任助教らの研究チームは、金属含有ゼオライト触媒における活性サイトの分布がメタン酸化反応の性能に影響を与えることを明らかにした。

主要な温室効果ガスの一つであるメタンを付加価値が高く輸送しやすい化学物質に変換する反応プロセスの開発は、地球温暖化とメタンの輸送難の問題に対する画期的な解決策となる。しかし、メタンは極めて安定な分子であり、温和な条件下での活性化は非常に難しい。これまでにCu含有ゼオライト触媒がメタンの部分酸化反応に有効な触媒であり、メタンをメタノールへと変換できることが報告されていたが、メタノール収率・選択率は不十分であった。

本研究では、同じく温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)を酸化剤としたメタン転換反応に用いるCu含有ゼオライト触媒の性能改善に取り組んだ。具体的にはCu含有ゼオライト触媒を構成するCuサイト(メタン活性化サイト)と酸サイト(ゼオライト骨格内Al原子)の量ならびに位置関係の影響を系統的に検討した。位置関係については原子スケールからミリメートルスケールまで変化させ実験を行った。その結果、Cuサイトと酸サイトが近傍に分布しているとエチレン、プロピレンといった低級オレフィンの生成に有利であることが分かった。両サイトがある程度の空間的距離を保ち、均一に分布する場合、メタノールが選択的合成に有利に働き、Cuサイトが過剰に存在するとCO2の生成が促進されることが分かった。この結果はメタノールを中間体として用いるメタンから炭化水素への転換反応の実現に大きく貢献するものとなった。

本研究成果は、東京工業大学 国際先駆研究機構World Research Hub (WRH)、Ruhr-University BochumのHermann Gies(ハーマン・ギース)教授、シドニー大学のJun Huang(ジュン・フアン)教授らによって行われ、3月28日付の「Nature communications」に掲載された。