Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2024.05.23

プレスリリース

アルキルと芳香環のハイブリッドミセル

傘型両親媒性分子の新設計と新機能

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の遠藤匡哉大学院生(研究当時)、同 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所のロレンツォ・カッティ助教と吉沢道人教授らは、新しい傘型両親媒性分子の設計と合成により、アルキル鎖と芳香環パネルの両方を組み込んだ、前例のない高機能性の「ハイブリッドミセル」を開発した。

ミセルは、親水部と疎水部からなるひも状の両親媒性分子が水中で形成する集合体である。その研究の歴史は長いが、これまで疎水部にはアルキル鎖が利用されていた。2013年に吉沢らは、疎水部に芳香環パネルを持つ湾曲型両親媒性分子を開発した。その自己集合で形成される「芳香環ミセル」は、既存のアルキルミセルと異なり、水中で大小さまざまな色素分子を効率良く捕捉した。しかしながら、その機能を超えるミセルの開発は達成できていなかった。

本研究では、ひも状のアルキル鎖と湾曲型の芳香環パネルの両方を備えた「傘型」両親媒性分子を設計した。この分子が水中で自己集合することで形成する球状のハイブリッドミセルは、既報のアルキルや芳香環ミセルを上回る、加熱と希釈条件に対する高い集合安定性を示した。さらに、この新型ミセルでは、巨大な色素分子や環状分子を高効率に捕捉し、水溶化することに成功した。本成果は、機能性ミセルの新しい設計指針を提示するものであり、環境調和した水媒体での特異物性や新奇反応への展開が期待される。

これらの研究成果は、欧州の主幹化学雑誌「Angewandte Chemie(アンゲヴァンテ・ケミー)」に掲載された(オンライン版:4月15日、冊子版:印刷中)。