Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.07.08

プレスリリース

細胞内の状態を可視化するセンサーの開発

新開発のタンパク質の色の変化でストレスのたまり具合を捉える

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の杉浦一徳研究員(研究当時。現・大阪大学 産業科学研究所 研究員)と久堀徹教授らは細胞内の酸化還元状態をリアルタイムにモニターできる新しい蛍光タンパク質センサーを開発し、動物細胞や植物細胞内の酸化ストレスのたまり具合、光合成に伴う酸化還元状態が変化する様子などを捉えることに成功した。

細胞内の酸化還元状態の変化を探るために様々なタンパク質センサーが開発されてきたが、今回、還元状態から酸化状態の変化によって青から緑に色が変わる新しいセンサーを開発した。環境の変化によって色を変えるアオガエルにちなんで、このタンパク質センサーを「FROG/B」と命名した。

生体内では酸素が過剰な電子を受け取ると反応性が極めて高い活性酸素種(一般にROSと呼ばれる)が生成し、これがタンパク質や脂質を酸化して障害をもたらす酸化ストレスの原因になる。一方、光合成をおこなう生物では、光照射によって水が分解されて還元力が生じ、NADPHという還元物質が作られる。このNADPHを利用して二酸化炭素が還元され、糖が合成されている(光合成反応)。また、水の分解で生じる還元力の一部は細胞内の様々な酵素の機能の制御にも使われている。多くの酵素は還元されると、活性が上昇、つまり、スイッチがオンの状態になる。したがって、細胞内の酸化還元状態を知ることは、光合成をおこなう細胞の機能制御のメカニズムを探る大切な情報である。

研究成果は6月23日付(現地時間)「Proceedings of the National Academy of Sciences, USA(アメリカ科学アカデミー紀要)」(電子版)に掲載された。