Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.07.07

プレスリリース

有機トランジスタ用半導体の超高速塗布成膜に成功

プリンテッドエレクトロニクスの実用化に大きく前進

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の飯野裕明准教授、半那純一名誉教授、Hao Wu(ハオ・ウー)研究員(研究当時)らは、ディップコート法と液晶性有機半導体を活用し、有機トランジスタ用結晶膜成膜の超高速化(2.4 m/分以上)に成功した。この成膜速度は溶液プロセスによる従来の成膜速度(10 mm/分以下)に比べ2,000倍以上早く、実用レベルである。

得られた結晶膜は基板全面にわたり均一で、これを用いたボトムゲートボトムコンタクト型トランジスタは素子間のばらつきが小さく、高い移動度(Ph-BTBT-10[用語4]:4.1 cm2/Vs、σ:18 %)を示した。さらに、10 cm角の基板上に形成した結晶膜を用いて作製した250個のトランジスタにおいても、同様の移動度を得た。

有機半導体膜の成膜の高速化は印刷技術を用いたエレクトロニクスの実用化の試金石であったが、今回の成果は溶液プロセスを用いて高速化が可能であることを実証したもので、低コストのRF-IDタグやIoTトリリオンセンサーなどの実用化を大きく推し進めるものと期待される。

本研究成果は、6月22日に米国化学会 ACS Applied Materials and Interface(アプライド・マテリアルズ・アンド・インターフェイス)の電子版に掲載された。