Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2018.07.05

プレスリリース

超短パルス光を用いてダイヤモンドの光学フォノン量子状態を制御

量子メモリー開発につながる成果

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の中村一隆准教授らは、慶應義塾大学 大学院理工学研究科の鹿野豊特任准教授、自然科学研究機構 分子科学研究所の岡野泰彬技術職員と共同で、超短パルス光により生成した40テラヘルツ(THz、40兆 Hz)の周期で原子が集団振動するダイヤモンドのコヒーレント光学フォノンの量子状態制御に成功し、その理論モデルを構築した。

10フェムト秒(fs)以下の時間幅を持つ近赤外光パルスにより生じた25 fs周期で振動するダイヤモンドコヒーレントフォノンにより変化する透過率を実時間計測した。さらに高精度に時間制御したパルス対を励起に用い、ダイヤモンドコヒーレント光学フォノンの量子状態を制御することに成功した。また振動準位および電子準位で構成される系において光応答過程を計算し、ダイヤモンドのコヒーレント光学フォノンに対するコヒーレント制御の理論モデルを構築し、実験結果を再現した。

近年、ダイヤモンドの光学フォノンは振動数が高く熱的な影響を受けにくいことから、室温で動作する量子メモリーへの応用に向けた研究が行われている。今回の研究により動作原理が明らかになり、高精度の量子状態制御が可能になることが期待される。

研究成果は6月25日(英国時間)に国際科学雑誌「Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)」オンライン版に掲載された。