Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2018.03.12

プレスリリース

“バイオプラスチック”を捕まえるナノカプセル

疎水性ナノ空間による親水性乳酸オリゴマーの捕捉に成功

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の草葉竣介大学院生(修士課程2年)、山科雅裕博士研究員、吉沢道人准教授らは、疎水性の空間を有するナノカプセルが、水中で親水性の乳酸オリゴマーを強く内包することを発見した。また、ナノカプセル内では、環状の乳酸2量体の分解が著しく抑制された。さらに、この特異な内包挙動のメカニズムを解明した。本研究成果は、疎水性カプセル空間による初の親水性オリゴマーの捕捉であり、新たな人工レセプター(受容体)の合成研究への展開が期待される。

親水性の生体分子(アミノ酸や核酸塩基など)は水分子と水素結合を形成するため、水中では高度に安定化している。生体のタンパク質ポケットは多点の分子間相互作用でそれらを水中で捕捉できる。しかしながら、人工の分子レセプターでは水中での親水性分子の内包は困難な課題であり、とりわけ、バイオプラスチックに関連する乳酸オリゴマーの内包は未達成であった。本研究では、水中で芳香環に囲まれた「疎水性ナノ空間」が瞬時にかつ100%の収率で、「親水性の乳酸オリゴマー」を内包できる(結合定数:105 M–1以上)ことを見出した。また、内包された環状の乳酸2量体(ラクチド)は、水中での加水分解反応が顕著に抑制された。分子レベルでの詳細なメカニズムの検証から、内包体は多点の分子間相互作用(CH-π相互作用と水素結合)に基づく負のエンタルピー変化により、水中で安定化することが明らかになった。

これらの研究成果は、株式会社リガクとの共同研究によるもので、欧州の主幹化学雑誌 Angewandte Chemie(アンゲヴァンテ・ケミー)に速報論文として、平成30年2月28日付け(ドイツ時間)で掲載された。