Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2024.05.10

プレスリリース

細胞内で発現しにくいタンパク質の合成を促進する翻訳因子を発見

生命を形作るタンパク質は、DNAにコードされた遺伝子配列をもとに細胞内装置リボソームによって合成され、この過程は「翻訳」と呼ばれます。リボソームはどんなタンパク質でも合成可能、と思われがちですが、実際には得手不得手があり、さまざまな配列モチーフの合成に困難が伴っていることが明らかになってきました。例えば正電荷(リシン、アルギニン)、あるいは負電荷に富むアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)を立て続けに翻訳すると、リボソームによる合成が停滞、あるいは途中終了するなどの翻訳異常が発生します。

岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(理)の茶谷悠平准教授、東京工業大学 科学技術創成研究院の田口英樹教授らのグループは大腸菌をモデル生物とした解析から、「難翻訳」配列への対抗手段として翻訳伸長因子ABCFタンパク質が働いていることを新規に明らかにしました。大腸菌などに保持される4種のABCFタンパク質は、それぞれが異なるアミノ酸配列に起因する翻訳異常を緩和、予防する役割を持ち、多種多様なタンパク質の合成を可能にしているものと考えられます。今後ABCFタンパク質の詳細な機能が明らかになることで、合成困難なアミノ酸配列モチーフを含む有用タンパク質の発現効率化などにつながると期待されます。本研究は2024年4月25日、英国学術雑誌 「Nucleic Acids Research」オンライン版に掲載されました。