Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2024.01.16

プレスリリース

リボソームがタンパク質の合成を中断する仕組みを解明!

疾患原因の解明や、効率的なタンパク質生産を実現する遺伝子設計、技術開発へ期待

東京工業大学科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターの田口英樹教授と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の茶谷悠平准教授の合同研究チームは、これまで不明だったタンパク質合成中断のメカニズムを解明しました。

生命を形作るタンパク質は、DNAの遺伝子配列をもとに、細胞内装置リボソームによって合成されます。リボソームは遺伝子配列を途切れることなくアミノ酸へと変換、連結することで、タンパク質を合成(翻訳)します。しかし、負電荷に富むアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)を立て続けに翻訳すると、一部のリボソームは合成を中断してしまうことが明らかにされていました。しかし、なぜ合成が中断されるのか、その分子メカニズムはこれまで不明でした。

研究チームは試験管内の再構成実験から、上記の問題解決に臨み、研究の結果、合成中断は通常とは異なるメカニズムで新生タンパク質がリボソームから切り離されるか、合成中には作用しないはずのリボソームリサイクル経路の働きによって引き起こされていることが明らかとなりました。また、合成中断は、タンパク質合成が滞りがちな栄養枯渇や高温などストレス条件で、より起こりやすくなることも示唆されました。

正確に遺伝子を発現させることは生命活動の大前提ですが、本研究からその障害となる異常反応の詳細なメカニズムが明らかとなり、より効率的なタンパク質発現を実現させる遺伝子設計、技術開発などが可能になると期待されます。

本研究は米国学術雑誌「Cell Reports」オンライン版に2023年12月9日に掲載されました。