Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.08.16

プレスリリース

超難溶性ポリマーを水溶化するナノカプセル

V型両親媒性分子の内包によるポリマーの新分析・加工技術

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の青山慎治大学院生(博士後期課程1年)、同 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所のロレンツォ・カッティ助教、吉沢道人教授は、水はもちろんのことさまざまな有機溶媒にも溶けない超難溶性ポリマーを水溶化する新手法を開発した。水溶化により、これまで困難であったポリマーの詳細な構造解析と物性評価が可能となった。さらに、超難溶性ポリマーの薄層フィルムの簡便な作製にも成功した。本研究成果および手法は、溶解性の問題で取り扱いが困難な多様な機能性ポリマーに応用することで、環境調和型の新たな材料創製への展開が期待される。

さまざまなポリマーの中でも、芳香環骨格を主軸に持つポリマーは、高機能性材料の原料として最近注目されている。しかしながら、このような芳香環ポリマーは、その高い剛直性と強い凝集性から、水や有機溶媒に全く溶解しない。これまでの可溶化の手法は主に、ポリマー骨格への大量の側鎖(=置換基)導入に限定されていた。ただ、側鎖の導入が困難な場合や導入によってポリマー物性が変化する場合があった。本研究では、独自に開発したV型両親媒性分子を超難溶性の芳香環ポリマーと混合することで、ナノカプセル化を介して、ポリマーの効率的な水溶化に初めて成功した。また、可溶化を実現したことで、これまで不可能であったポリマーの構造や物性を解明できた。本手法の最大の特徴は、カプセルからの取り出しで、芳香環ポリマーの薄層フィルムが簡便に作製できる点にある。すなわち、水を溶媒として、煩雑な側鎖導入を必要とせず、使用したV型両親媒性分子も再利用可能な、ポリマーの新加工法を開発した。

これらの研究成果は、欧州の主幹化学雑誌 Angewandte Chemie(アンゲヴァンテ・ケミー)にオープンアクセスで掲載された(オンライン版:6月5日、冊子版:印刷中)。