Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.05.23

プレスリリース

超高速量子経路干渉法によるGaAs半導体中の電子デコヒーレンス時間測定

東京工業大学 物質理工学院 材料系の高木一旗大学院生(博士後期課程2年)、科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の萱沼洋輔特任教授(研究当時。現 大阪公立大学客員教授)と中村一隆准教授らの研究グループは、フェムト秒光パルスを利用した超高速量子経路干渉法を用いて、半導体単結晶における電子デコヒーレンス時間の計測に成功した。さらに光誘起電子のデコヒーレンス過程は周りの電子との衝突によることを明らかにした。

量子力学特有の重ね合わせ状態が持つ特質である量子コヒーレンスが、環境との相互作用によって失われるデコヒーレンス現象は、固体中では非常に急速に起こるため、これまで定量的な評価が極めて難しかった。本研究では、電子状態の干渉による強度のパルス時間遅延依存性から、電子のデコヒーレンス時間を求めた。具体的には、ガリウム(Ga)とヒ素(As)からなる半導体単結晶に2つの光パルスを照射することで、半導体中の電子状態とフォノン状態が持つ波の性質である重ね合わせ状態を測定する、時間領域の干渉実験を行った。この実験では、2つの光パルスの偏光角度を45度に設定することで、特異な干渉形状を観測できた。また量子理論モデル計算と合わせた解析を行うことで、電子デコヒーレンス時間を定量的に決定できた。この電子デコヒーレンス時間の温度依存性の解析から、電子デコヒーレンス過程が光励起電子と周りの電子との衝突で起こっていることを明らかにした。

本研究成果は5月11日付(現地時間)に米国物理学会誌「Physical Review B」のオンライン版に掲載された。

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