Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.01.27

プレスリリース

太陽光の可視光を紫外光に変換する固体膜を発明

人工光合成などに有用な紫外光を生成する革新技術

東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の村上陽一教授と榎本陸博士後期課程学生は、低強度な可視光を空気中で安定に紫外光に変換する固体膜を発明した。作用力の強い紫外光は、水からの水素製造やCO2からの人工光合成などを行う光触媒、樹脂硬化などに広く利用できて有用性が高いが、可視光が主な太陽光や室内光にはわずかしか含まれない。可視光を紫外光に変換する従来報告の材料は、ほぼ全てが揮発性と可燃性があり生体に有害な有機溶媒を用いた溶液で、また、酸素分子による機能失活と材料劣化を防ぐために脱酸素した上で封止する必要があった。加えて、光照射に対する耐久性実証も無酸素環境で最大1時間程度と、社会実装には程遠かった。

今回、村上教授と榎本陸大学院生は、独自に考案・開発した温度勾配成膜装置を用い、条件を最適化した結果、太陽光程度の弱い可視光(青色光)を空気中で安定かつ比較的高効率に紫外光に変換する固体膜の創出に世界で初めて成功した。本成果は、様々な光触媒や光硬化などに対し高い作用力をもつ紫外光を、環境光程度の弱い照射光から連続生成することを可能にした革命的な発明であり、人類の光利用に革新をもたらすものである。

本研究成果は12月20日、英国王立化学会の査読付学術誌Journal of Materials Chemistry Cに速報(Communication)でオープンアクセス掲載(External site)された。