Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.01.25

プレスリリース

“構造活性相関転移”による低分子医薬品候補の設計

既知の構造活性相関情報から異なる阻害剤の活性向上を予測

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の梅寺倖平大学院生(博士後期課程2年)、同 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の中村浩之教授と株式会社理論創薬研究所の吉森篤史博士、ライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン(ドイツ)のユルゲン・バヨラト教授らは、低分子医薬品の迅速な構造最適化を目指し、構造活性相関(SAR)転移の予測によるマトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP-1)阻害剤を設計した。

低分子医薬品の開発では、母骨格の構造が異なっていても類似したSARを示すという、SAR転移を可能とする阻害剤の組み合わせが知られている。SAR転移の予測は迅速な構造最適化につながるが、これまでそうした阻害剤の組み合わせは十分に探索されていなかった。

研究グループはMMP-1阻害剤について、大規模な活性データベースを網羅的に検索することで、SAR転移を起こす既存阻害剤を発見した。活性の向上が予測された新規化合物を実際に合成して評価すると、既知化合物よりも3.5倍高いMMP-1阻害活性が得られた。ファーマコフォアフィッティングにより結合様式を解析すると、ハロゲン結合の形成が活性の向上に寄与したことが示唆された。

本研究成果は、迅速な医薬品設計を可能にするものであり、新薬をいち早く社会に届けることで、人々の健康に寄与することが期待される。また、12月3日付(現地時間)に英国科学誌「Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)」に掲載された。