Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.10.28

プレスリリース

ナノ構造誘起法による強磁性ナノワイヤ

高保磁力単結晶ナノワイヤの新しい作製方法

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の真島豊教授の研究グループは、線幅30 nmのコバルトと白金の交互積層ナノワイヤのアニール(加熱)処理のみで、10 kOe以上の高保磁力を有するL10規則化強磁性単結晶ナノワイヤを作製する「ナノ構造誘起法」を開発した。

強磁性ナノワイヤは、トンネル磁気抵抗素子、磁気メモリ、磁気センサなどさまざまな用途で利用されているが、その作製方法としては、結晶性基板上に強磁性薄膜を作製し、エッチングによりナノワイヤ化する手法が主流である。本研究では、シリコン基板上にナノワイヤを直接形成し、アニール処理のみで強磁性ナノワイヤを作製する「ナノ構造誘起法」を新たに開発した。本手法により作製した強磁性ナノワイヤは、線幅が30 nmのどんぐり型の断面形状で、双晶を含むL10規則化単結晶構造からなり、10 kOe以上の高保磁力を有することが確認できた。

今回開発した「ナノ構造誘起法」では、結晶性基板を用いる必要がなく、アニール処理のみで高保磁力強磁性単結晶ナノワイヤを作製できることから、従来手法よりも広い範囲の基板でスピンデバイスを簡便に作製でき、産業用途への応用が期待される。

今回の成果は10月6日に、ナノスケール科学技術分野で権威ある学術誌の一つとされる「Nanoscale Advances (Royal Society of Chemistry)」のオンライン版に掲載された。