Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.10.06

プレスリリース

極低温で動作する光変調器の高速動作に成功

量子コンピュータや超伝導マイクロプロセッサ活用に欠かせない極低温から室温への高速信号伝送に期待

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の庄司雄哉准教授、工学院 電気電子系の高村陽太助教、水本哲弥名誉教授と、カリフォルニア大学サンタバーバラ校 電気・コンピュータ工学専攻のパオロ・ピンタス(Paolo Pintus)研究員、ジョン・バウアーズ(John Bowers)教授、レイセオンBBNテクノロジーズ社のレオナルド・ランザニ(Leonardo Ranzani)研究員らの共同研究チームは、磁気光学効果を活用して、極低温環境で動作する光変調器を開発し、高速データ通信に成功した。

高度な処理能力により、次世代技術として注目を浴びる量子コンピュータや超伝導マイクロプロセッサは、絶対零度(-273.15℃)にきわめて近い極低温下でのみ動作する。そのため、コンピュータなどから金属配線を通じて電気信号を取り出す従来のデータ伝送方法では、配線から伝わる熱が妨げになって伝送スピードが落ちるという問題が生じていた。

光変調器は、コンピュータなどから送られる電気信号を、大容量・高速データ伝送に適した光通信で送るための光信号に変換するデバイスである。本研究で開発したものは磁気光学効果を活用した「磁気光学変調器」で、これまでのような電圧駆動型ではなく電流で駆動するため、超伝導回路との接続性がよく、極低温環境においても高効率で動作し、2 Gbit/sでの信号伝送にも成功した。さらに、この光変調器は光通信で多用される波長1,550 nmの光で動作し、シリコンフォトニクスを使った光集積回路に搭載されているため、汎用性にも優れている。本技術を用いることで、熱を伝えにくい光ファイバ[用語8]を介した高速なデータの伝送が可能になり、次世代コンピュータなどの実用化に大きく貢献するものと期待される。

本研究成果は、科学雑誌「Nature Electronics」に2022年9月5日付でオンライン掲載された。