Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.09.08

プレスリリース

赤色蛍光タンパク質型cGMPセンサーの開発と多色イメージングへの応用

新たな蛍光色で細胞内のcGMP動態を可視化

東京工業大学科学技術創成研究院の北口哲也准教授らは、東京大学大学院総合文化研究科の坪井貴司教授と滝澤舞大学院生(研究当時)、大須賀佑里大学院生、石田りか大学院生(研究当時)らと共同で、細胞内セカンドメッセンジャーの一種であるcGMP(環状グアノシン一リン酸)を可視化できる、赤色cGMPセンサーRed cGull(Red cGMP visualizing fluorescent protein)の開発に成功しました。この研究成果は、2022年9月5日にCommunications Biology(オンライン版)に掲載されました。

今回開発されたRed cGullは、赤色蛍光タンパク質mAppleを二分割し、その間にcGMP分解酵素(phosphodiesterase 5α, PDE5α)のcGMP結合ドメインを挿入した構造をもつ、蛍光タンパク質センサーです。mAppleとPDE5αの間のリンカーアミノ酸配列を最適化することで、cGMPに対する蛍光応答を調節しました。Red cGullはcGMPに応答して蛍光輝度が約6.7倍上昇します。

Red cGullをヒトやマウスのさまざまな臓器由来の細胞に発現させ、蛍光顕微鏡によるイメージングを行うことで、細胞内のcGMP動態をリアルタイムで可視化解析することに成功しました。また、Ca2+特異的な緑色蛍光色素や、青色光活性型タンパク質と同時に使用することで、2色イメージングや光遺伝学ツールとの併用が可能であることを示しました。

さらに、Red cGullをマウス小腸内分泌細胞株に発現させ、消化管ホルモン分泌時における細胞内cGMP動態について解析した結果、アミノ酸であるL-アルギニンが、一酸化窒素合成酵素を介して小腸内分泌細胞のcGMP産生を促すことを明らかにしました。