Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.04.28

プレスリリース

統合核燃料サイクルシミュレーター「NMB4.0」の無償提供を開始

先進エネルギーシステム開発の戦略立案に資する、原子力のサイクル全体を計算可能な基盤プラットフォームを構築し、一般に公開

東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所(以下「ZC研」)の中瀬正彦助教、岡村知拓大学院生(研究当時 環境・社会理工学院 融合理工学系 博士後期課程3年)、竹下健二教授(研究当時)らの研究グループは、日本原子力研究開発機構(JAEA、以下「原子力機構」)の西原健司グループリーダーらの研究グループと共同で、将来の原子力利用シナリオを評価するシミュレーター「NMB4.0」を開発し、3月15日に無償公開した。

日本における脱炭素化を見据え、様々な国際情勢に対応できるエネルギー戦略の立案には、各電源の長所・短所の定量的な評価が欠かせない。特に原子力エネルギー利用においては、いかなる炉型や核燃料サイクル[用語3]を採用すべきかを見極めるため、必要となるウラン資源、プラント規模、核燃料サイクル規模、廃棄物発生量などの物量を事前に見積もっておく必要がある。しかし国内の既存シミュレーターはいずれも非公開で、包括的な戦略立案に向けた横断的議論が困難な状況であった。

ZC研と原子力機構は、今後のエネルギーや原子力戦略を闊達に議論するための基盤となるシミュレーターが不可欠と考え、共同開発を実施。高速な計算アルゴリズムを備え、燃料製造、再処理、処分といった広汎な核燃料サイクルのプロセスや多様な炉型に対応しながら、それらの組合せやパラメータを柔軟に設定でき、将来想定される多くのシナリオ解析を可能とする「NMB4.0」を開発した。

その上で、この「NMB4.0」を無償で公開し、開発者とユーザーを広く募集。今後は国内外の標準シミュレーターを目指し、経済性や環境負荷などの評価機能をさらに充実させながら、他電源を含むエネルギー分野全般を横断した評価研究の実現に向けた研究プラットフォームの構築に取り組んでいく。