Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.04.12

プレスリリース

温度変化により断熱と放熱を自発的に制御する材料を開発

結晶構造の次元性変化により熱の伝導性をスイッチ

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の片瀬貴義准教授、神谷利夫教授、同 元素戦略研究センターの細野秀雄栄誉教授らの研究グループは、結晶構造の次元性が温度変化によって可逆的に変化し、低温で断熱して高温で放熱する熱伝導制御材料を開発した。

近年、深刻化するエネルギー問題を解決する手段の1つとして、熱を高度に制御し、廃熱を削減・有効活用することが期待されている。熱伝導率を大きく変化させる材料があれば、流れる熱量を制御でき、放熱・断熱を切り替えてデバイスの温度を調整することで効率のよい熱利用が期待できるが、そのような材料の例は極めて少なかった。

本研究では、2次元(2D)構造を有するセレン化スズ(SnSe)と3次元(3D)構造を有するセレン化鉛(PbSe)の固溶体を作製し、温度を変えることによって2D構造から3D構造へ可逆的に転移させ、熱伝導率を3倍変化させることに成功した。半導体(2D構造)から金属(3D構造)へ変化することで電気伝導度が6桁増加し、電子の熱伝導率への寄与が大きくなる一方で、2D構造では層構造が格子振動による熱の伝搬を阻害するため、結果として熱伝導率の変化が大きくなるというメカニズムも解明した。本成果は、高度な熱制御に向けた、新たな熱伝導制御材料の設計指針となることが期待される。

研究成果は「Advanced Electronic Materials」オンライン版に速報として3月25日付(現地時間)で掲載された。