Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.03.11

プレスリリース

藻類に窒素をより多く取り込ませる新しい機構を発見

低窒素環境での食糧増産にも期待

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の周柏峰大学院生、科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の田中寛教授、今村壮輔特定教授(兼 日本電信電話株式会社(NTT) 宇宙環境エネルギー研究所 特別研究員)の研究グループは、東北大学大学院 医学系研究科の島弘季助手、五十嵐和彦教授と共同で、植物の成長に欠かせない窒素の取り込みを活性化する転写因子であるMYB1の機能が、窒素が充分に存在する環境では抑制されてしまうメカニズムを、植物の原型と言える藻類を用いて解明した。

研究グループでは、全長のMYB1を持つ株と、MYB1の一部を欠損させた複数の株の比較対照によって、MYB1が自身の内部に持っている機能を抑制する部位を特定。また、機能抑制部位と結合するタンパク質の探索を行い、抑制のメカニズムを明らかにした。さらに、このメカニズムの応用によって、窒素が豊富に存在する環境であっても、窒素を取り込む遺伝子群の発現を高いまま維持する藻類の作出に成功した。

窒素は、藻類のみならず植物全般の成長を決定づける栄養素であるため、窒素を効率的に多く取り込ませることは、植物の成長促進および作物生産において有効な手段であると考えられている。

今回解明された窒素取り込み活性化のメカニズムを藻類や作物などに応用することで、藻類バイオマス生産の低コスト化や、低窒素環境での食糧増産などへの貢献が期待される。

本成果は3月11日、スイスの科学雑誌「フロンティアズ イン プラント サイエンス(Frontiers in Plant Science)」オンライン版に掲載された。