Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.11.18

プレスリリース

タンパク質の連続的な合成を保証するリボソーム「トンネル」の役割を発見

新しく作られたタンパク質の長さや大きさで、合成の不安定性を制御する

東京工業大学 科学技術創成研究院の茶谷悠平特任助教、田口英樹教授、理化学研究所の岩崎信太郎主任研究員らのグループは、翻訳の連続性を破綻させる「リボソームの不安定化」現象について解析し、リボソーム内部の新生タンパク質(新生鎖と呼ぶ)の通り道(「トンネル」)と新生鎖間との相互作用が、翻訳破綻のリスクを抑制していることを見出した。

細胞内装置であるリボソームは、DNAからメッセンジャーRNA(mRNA)に転写された遺伝情報をもとにあらゆるタンパク質を合成する(生命のセントラルドグマにおける「翻訳」過程)。その際、いわば、タンパク質の設計図であるmRNAは、最初から最後まで連続的に読み取られる必要があり、読み取りが途中で止まってしまうと、タンパク質の「不良品」が生み出されてしまう。こうしたタンパク質の「不良品」を生み出さないためには、mRNAの開始コドンから終止コドンまでの領域を途切れることなく連続的に翻訳できるよう保証することが、生命にとって必須となる。
これまで、細胞内で、タンパク質合成の場となるリボソーム自身が翻訳の連続性に寄与すると経験的に理解されていたものの、具体的にどのようなメカニズムで「翻訳」の連続性が保証されているのかは不明だった。

本研究により、リボソーム内部の「トンネル」において作られた新しいタンパク質(新生ポリペプチド鎖)の長さと大きさによって、「リボソームの不安定化」が免れることがわかった。このメカニズムにより、リボソームは多種多様なアミノ酸配列のタンパク質を途切れることなく合成できる万能性を獲得し、今日に至るまでのタンパク質進化が可能になったものと考えられる。

この成果は、欧州分子生物学機構が発行する専門誌The EMBO Journalのオンライン速報版で10月20日に公開された。