2021.06.14
蛍光抗体と発光酵素を組み合わせ、発光色の変化で抗原を高感度検出
簡便で携帯可能な、物質検出手法として期待
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の上田宏教授と同大学 生命理工学院 生命理工学系の髙橋里帆大学院生(研究当時)、安田貴信大学院生、大室有紀助教(研究当時)は、蛍光色素で化学修飾した抗体断片と発光酵素を結合させることにより、青から赤への発光色の変化で抗原となる各種微量物質の存在を簡便に検出できるバイオセンサーの構築に成功した。
これまで同グループでは、蛍光修飾した抗体断片に、反応を引き起こすための励起光を照射し、蛍光強度の変化を見ることによって、抗原としてのさまざまな物質の有無を測定するクエンチ抗体(Quench body/Q-body)を構築してきた。ただし、この従来の測定方法では、安定した光源を備えた比較的高価な装置が必要だった。
今回は新たに生物発光共鳴エネルギー移動(Bioluminescence Resonance Energy Transfer/BRET)の原理を利用し、蛍光修飾されたクエンチ抗体(Q-body)と発光酵素を結合させて、酵素と反応する基質を加えておくことで、外部光を当てることなく、自ら光るセンサータンパク質を構築した。これを「BRET Q-body」と命名した。
この「BRET Q-body」を用いたシステムでは、発光酵素に由来する青色から、蛍光色素に由来する赤色への発光スペクトルの変化により、簡便かつより高い応答と精度で、抗原となる物質を測定することに成功した。
発光色の変化は暗所で目視することも可能で、さまざまな物質を簡単に検出、診断できる携帯可能な装置の実現につながるものと期待される。
この成果は、米国時間5月20日に米国化学誌「Analytical Chemistry(アナリティカル・ケミストリー)」にオンライン掲載され、カバーイラストがSupplementary Journal Coverに採択された。