Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.04.13

プレスリリース

色素分子を「ねじる」と「かさねる」

分子カプセルの新たな空間機能を開発

東京工業大学 科学技術創成研究院の吉沢道人教授、東京工業高等専門学校の工藤光日(専攻科2年)、井手智仁准教授(物質工学科)らは、カルバゾール環の殻を持つ2ナノメートルサイズの分子カプセルの作製に成功した。このカプセルは水中で安定に存在し、電気化学的な刺激に対しても高い安定性を示した。また、カプセル内に取り込まれた色素分子は、前例のない立体構造や積層構造を取ることを発見し、分子カプセルの新たな空間機能の開発に成功した。

カルバゾールはその分光学および電気化学特性から、有機EL材料など、幅広い分野で注目されている。近年、カルバゾール環を含む三次元化合物(分子リングやケージなど)の研究も活発に行われているが、閉じられた空間を持つ分子カプセルは未開発であった。本研究では、2つのカルバゾール環を含むV型両親媒性分子を新たに合成し、それらが水中で自己集合することで、2ナノメートルの分子カプセルが形成することを見出した。このカプセルは水中で、クマリン色素およびBODIPY色素[用語3]を効率良く取り込むことできた。注目すべきことに、内包されたこれらの色素分子はカプセル骨格の影響により、これまでに報告例のない「ねじれ構造」と「かさなり構造」を取ることが明らかになった。

上記の成果は、2021年2月26日付で欧州の主幹化学雑誌Angewandte Chemie(アンゲヴァンテ・ケミー)にオンライン掲載された。