Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2020.11.16

プレスリリース

緑色蛍光タンパク質型乳酸センサーとピルビン酸センサーの開発

乳酸やピルビン酸は、グルコース代謝によって生じる重要な代謝産物です。解糖系でグルコースが分解されてATPとピルビン酸が生じ、ピルビン酸は好気条件でクエン酸回路に運ばれてさらなるATPが産生されます。一方嫌気条件では、乳酸発酵によってピルビン酸から乳酸が産生されます。細胞内の代謝状態をリアルタイムで解析するには、乳酸やピルビン酸などグルコース代謝関連分子の濃度変化を可視化できる蛍光タンパク質センサーが有効です。

東京大学大学院総合文化研究科の坪井貴司教授と東京工業大学科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の北口哲也准教授らの研究グループは、緑色蛍光タンパク質を基盤とした乳酸センサーGreen Lindoblum(Green Lactate indicator suitable for fluorescence imaging)とピルビン酸センサーGreen Pegassos(Green Pyruvate sensing a single fluorescent protein-based probe)を開発しました。Green Lindoblumは乳酸存在下で蛍光輝度が約5.2倍に上昇し、Green Pegassosはピルビン酸存在下で蛍光輝度が約3.3倍に上昇しました。

このGreen LindoblumやGreen Pegassosを細胞に発現させ、蛍光顕微鏡で観察したところ、細胞内の乳酸およびピルビン酸濃度変化を可視化することができました。また、Green Lindoblumと赤色Ca2+蛍光指示薬Rhod2、Green Pegassosと赤色cAMPセンサータンパク質Pink Flamindoの2色同時イメージングにもそれぞれ成功しました。さらに、ヒトiPS細胞由来心筋細胞で電子伝達系を阻害する薬剤を加えた際の細胞内乳酸およびピルビン酸動態の可視化にも成功しました。

以上の結果から、Green LindoblumおよびGreen Pegassosは細胞内のエネルギー代謝をリアルタイムで解析するツールとして有用であることが示され、さまざまな細胞種において代謝分子の相互作用に関する研究を加速させると考えられます。