2019.11.19
iPS細胞における放射線応答の遺伝子発現変化を解明
iPS細胞はゲノムDNAを守る仕組みが強く再生医療応用に期待
東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の島田幹男助教、松本義久准教授、環境・社会理工学院 融合理工学系 原子核工学コースの塚田海馬大学院生、香川望大学院生(当時)の研究グループはヒト皮膚由来線維芽細胞からiPS細胞を作成し、iPS細胞の放射線応答に関する遺伝子発現の変化を明らかにした。
ヒト初代継代線維芽細胞からiPS細胞を作成、神経幹細胞に分化誘導し、細胞に対して放射線照射後、次世代シークエンサーによるRNAシークエンス技術により、それぞれの細胞の遺伝子発現変化を解析。その結果、iPS細胞では通常の体細胞と比較してDNA修復や細胞周期チェックポイントなどゲノムDNAを守る仕組みが強くなり、一方である程度DNAに損傷を持つ細胞は積極的に細胞死によって排除される傾向があることを見出した。
ヒトの体細胞からiPS細胞へと変化させる技術はリプログラミングと呼ばれ、ヒトの臓器移植や疾患の治療などの再生医療分野で期待されている。一方で細胞内のゲノムDNAは細胞内外からの様々な刺激により常に損傷を受けているため、これらを修復する分子機構が存在するが、iPS細胞におけるDNA修復の分子メカニズムは不明な点が多かった。
研究成果はOxford Journal(オックスフォードジャーナル)出版社による日本放射線影響学会の学会誌「Journal of Radiation Research」(オンライン版)で10月28日に公開された。