Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2019.04.25

プレスリリース

性ホルモンの男女を見分ける分子カプセル

男性ステロイドホルモンの超高感度センシング法を開発

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の山科雅裕博士研究員(当時、現・理学院 化学系 助教)と吉沢道人准教授らは、水中で分子カプセルがステロイド性ホルモンの混合物の中から、男性ホルモンを選択的に捕捉できることを発見した。また、分子カプセルと蛍光色素を組み合わせることで、極微量の男性ホルモンの蛍光センシングにも成功した。本成果は人工のカプセル分子による初の超高感度な男性ホルモンの検出法であり、性ホルモンの生理活性機構の解明やドーピングの新検出剤の開発などが期待される。

酵素のタンパク質ポケットによる生体分子の選択的な捕捉は、続く生理活性や酵素反応を決定付ける重要な第1ステップである。生体のステロイド性ホルモンは、わずかな分子構造の差で異なる生理活性を誘導し、その役割によって男性と女性ホルモンに大別される。生体ポケットはこれらの性ホルモンを厳密に識別できるが、従来の合成レセプターでは識別できなかった。

本研究では、同グループが作製した分子カプセルが、種々のステロイド性ホルモンを水中で効率良く取り込むことを見出した。注目すべきは、そのカプセルが類似の構造を持つ男性と女性ホルモンの混合物から、男性ホルモンのみを識別して捕捉できたことである。そのメカニズムとして、剛直なカプセル骨格が内包したホルモンの形状に誘起されて構造変化し、多点の分子間相互作用が働くことが判明した。さらに、あらかじめ蛍光色素を捕捉させた分子カプセルを用いることで、交換反応によりナノグラム量の男性ホルモンの蛍光検出にも成功した。

上記の研究成果は、米国科学振興協会(AAAS)の科学雑誌「Science Advances」に、平成31年4月19日(米国東海岸時間)付けで掲載された。