Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2019.02.13

プレスリリース

超高速・超指向性・完全無散逸の3拍子がそろった理想スピン流の創発と制御

「弱い」トポロジカル絶縁体の世界初の実証に成功

東京大学 物性研究所の近藤猛准教授、黒田健太助教、野口亮大学院生、および東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の笹川崇男准教授らの研究グループは、産業技術総合研究所 物質計測標準研究部門 ナノ構造化学材料評価研究グループ 白澤徹郎主任研究員、理化学研究所 創発物性科学研究センター 計算物質科学研究チーム有田亮太郎チームリーダー、および大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻の越智正之助教らと共同で、擬一次元の結晶構造を持つビスマスヨウ化物β-Bi4I4(Bi:ビスマス、I:ヨウ素)において、「弱い」トポロジカル絶縁体相を世界で初めて観測しました。さらに、室温近傍で結晶の冷却速度を制御する事により、通常絶縁体からトポロジカル絶縁相へと転移させ、これに伴うスピン流のON/OFF制御を実証しました。

情報集積の行き詰まる「エレクトロニクス」に代わり、情報爆発に対する救世主と目されているのが「スピントロニクス」です。その理想的な条件は、限りなく速い速度で(超高速)、レーザーのごとく直進し(超指向性)、情報を失うことなく伝達する(完全無散逸)、スピン流です。それを実現すると理論的に予想されていたのが「弱い」トポロジカル絶縁体ですが、これまで未発見でした。

本研究では、スピントロニクス応用に向けて熱望されている理想スピン流を創発する「弱い」トポロジカル絶縁体を世界で初めて実証・観測しました。これによりレーザー照射で情報を可逆的に書き換えが可能なDVDの「スピントロニクス」版も可能であり、トポロジカル物性の真髄とも言える無散逸スピン伝導を利用した次世代のスピントロニクス技術に新展開をもたらすことが考えられます。

本成果は、英国科学誌「Nature」2019年2月11日(英国時間)に掲載されました。