2024.08.23
「動く光」で高分子合成のエネルギー効率を大幅改善
露光エネルギーを90%削減し持続可能社会の実現に前進
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の宍戸厚教授と同大学 物質理工学院 応用化学系の石山拓途大学院生らの研究グループは、高分子合成における光重合効率を格段に向上させる新たな手法を開発した。
本研究で開発した手法は、光を一方向に移動させながら照射し光重合を進行させることで、重合過程における分子の拡散および流動場を発生させるものである。従来の静止光による光重合と比較して、重合完了に必要な露光エネルギーを最大で90%削減することに成功した。さらに、動く光により合成した高分子の分子量は静止光を用いた場合よりも20倍も増大することを明らかにした。本手法は、実社会で広く用いられている多彩な高分子の合成にも適用でき、非常に汎用性に優れた手法である。
光重合は高分子の合成に留まらず、自動車や電気機器のコーティング、パッケージの印刷など多岐にわたる分野で利用されている。製造工程のエネルギーおよびコスト効率を大きく改善することが期待できる。
この成果は、7月29日に米国化学会誌「Macromolecules(マクロモレキュールズ)」に掲載された。