Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2024.06.17

プレスリリース

5.7GHz帯無線給電で動作するミリ波帯5G中継器を実現

国内で利用可能な周波数帯での電力供給で柔軟な設置が可能に

東京工業大学 工学院 電気電子系の加藤星凪大学院生、同 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の白根篤史准教授、同 工学院 電気電子系の岡田健一教授は、国内で利用可能な5.7 GHzの周波数帯の無線電力伝送を利用して動作するミリ波帯5G中継器の開発に成功した。本中継器は、無線電力伝送の5.7 GHz帯と、ミリ波帯5G通信の28 GHz帯という二つの大きく離れた周波数帯に同時対応するICチップの開発に世界で初めて成功したことで実現した。

研究グループはこれまでに、周波数の比較的近い24 GHz帯での無線電力伝送と28 GHz帯での5G通信による中継器の実現には成功していた。しかし24 GHz帯の無線電力伝送には、国内では未認可であるほか、伝送距離が短いという問題があった。

そこで本研究では、新たに4次サブハーモニックミキサを利用した整流器型ミキサ回路を考案し、安価で量産が可能なシリコンCMOSプロセスによってICを作成した。試作したICを搭載した5G中継器は、国内で利用可能な5.7GHz帯での無線電力伝送によって、最大電力変換効率55%で整流器1個あたり6.5 mWの直流電力を生成可能である。さらに28 GHz帯の5G通信において、±50°のビームフォーミング性能と、5%以下の良好なEVM特性を達成している。

今回開発した中継器は、これまで設置が難しかった多くの場所に設置可能なため、ミリ波帯5G通信のカバレッジを飛躍的に広げられる。また、スマートファクトリーの実現に必要な工場内無線通信や、中継器機能を持つドローンなど、さまざまな場面への応用が期待されている。

本研究成果は、6月16日~20日に米国ホノルルで開催される「2024 IEEE Symposium on VLSI Technology & Circuits」で発表される。