Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2024.04.18

プレスリリース

欠陥を並べることで有機-無機ハイブリッドペロブスカイト化合物の新たな派生構造を発見

新しい物質探索アプローチとして期待

東京工業大学 物質理工学院 材料系の大見拓也大学院生、同 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所(自律システム材料学研究センターResearch Center for Autonomous Systems Materialogy(ASMat)兼任)の東正樹教授、山本隆文准教授、同 化学生命科学研究所(ASMat兼任)の福井智也助教、福島孝典教授らの研究グループは、太陽電池材料として注目される有機-無機ハイブリッドペロブスカイトに分子イオンを添加することによって新規化合物を合成し、これまで知られていなかった一連の派生構造が形成されることを明らかにした。
FAPbI3(FA = CH(NH2)2)などの有機-無機ハイブリッドペロブスカイト化合物は、太陽電池、蛍光体などさまざまな分野で応用が期待されている半導体材料である。本研究では、ペロブスカイトFAPbI3のヨウ化物イオン(I)の一部を分子性のイオンであるチオシアン酸イオン(SCN)に置き換えることで、柱状欠陥が整列した新規化合物FA4Pb2I7.5(SCN)0.5の合成に成功した。この化合物は、同グループが過去に報告した柱状欠陥を持つFA6Pb4I13.5(SCN)0.5と合わせて、欠陥量に対応する1/nnは整数)を使ってFAn+1Pbn−1I3n−1.5(SCN)0.5として系統的に記述できる。さらに、nの値を変えることで光学特性が制御できる。有機-無機ハイブリッドペロブスカイトにおいて、欠陥の整列に基づく化合物系列が示された例はこれまでなく、この法則に基づいたさらなる新規物質の発見が期待される。
本研究には、コロラド州立大学のJames R. Neilson(ジェームス・ネイルソン)准教授、東京工業大学の谷口航大学院生、長瀬鉄平大学院生、ビクトリア大学の春田優貴博士研究員、Makhsud I. Saidaminov(マクスード・サイダミノフ)助教らが参画した。本研究成果は、4月17日付(日本時間)「ACS Materials Letters」誌のオンライン版にオープンアクセスで掲載された。