Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2024.01.22

プレスリリース

原子炉内部状態のリアルタイム・遠隔監視手法を提案

ニュートリノから原子炉運転状態と燃料組成を知る

東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の石塚知香子助教、千葉敏教授(研究当時。現名誉教授、株式会社NAT・NATリサーチセンター長)、同 環境・社会理工学院 融合理工学系の佐々木華蓮大学院生(研究当時)らの研究チームは、原子炉内で核分裂によって発生する1,000種類にわたる核分裂生成物のβ崩壊により炉外に放出される反電子ニュートリノ(以下、ニュートリノ)のスペクトルデータを理論計算により整備し、原子炉内での生成消滅計算と組み合わせることで、原子炉の運転状態(稼働中かどうか)のみならず、原子炉内のウランとプルトニウムの組成比を検知することが可能であることを見出し、新たな核査察の手法として提案した。

地球温暖化に対する危機意識の高まりや世界情勢の不安定化により、燃料調達が世界的に困難となる中で、ゼロカーボンエネルギー源としての原子力に対する再評価が進んでいる。原子力では安全性が再優先されるとともに、未申告の燃料交換などによって核兵器の材料が生成されないようにする必要がある。保障措置の手段、すなわち原子炉が申告通りに運転・燃料交換を行っているかどうかを検認するための核査察は、通常は運転後に行われることが多い。それに対し今回は、原子炉運転中に発生し炉外に放出されるニュートリノの数またはエネルギースペクトルを炉外で測定することにより、稼働中に原子炉内の燃料組成についての情報を得られることが分かった。これにより原子炉内部の情報をリアルタイムかつ非破壊かつ遠隔監視により得ることが可能となった。

本研究成果は、東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の石塚知香子助教と千葉敏名誉教授、佐々木華蓮大学院生(2023年3月末修士課程修了)、山野直樹研究員、東京都市大学の吉田正名誉教授によって行われ、2023年11月24日付の「Journal of Nuclear Science and Technology」に掲載された。