Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.12.20

プレスリリース

ナガニシア酵母はがん抑制因子BRCA2ホモログを持つ

酵母モデルによる乳がん・卵巣がん発症機構解明に期待

東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターのマルダン・パリハティ博士研究員(研究当時)、岩崎博史教授、坪内英生助教のグループは、ヒトがん抑制因子BRCA2と相同性を持つ因子(ホモログ)が菌類にも広く存在し、単細胞真核生物であるナガニシア酵母をモデルに菌類のBRCA2ホモログが相同組換えに中心的役割を果たすことを示した。

BRCA2遺伝子に変異を持つと、乳がんや卵巣がんの発症リスクが劇的に高まることが知られている。BRCA2はヒトを始めとする高等真核生物で見つかっていたが、真核生物の分子生物学を牽引してきた出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeや分裂酵母Schizosaccharomyces pombeなどのモデル酵母がBRCA2を持たないことから、酵母を用いたBRCA2の機能的理解が遅れていた。今回、ナガニシア酵母でBRCA2ホモログが見つかったことで、単細胞菌類をモデルにしたBRCA2の機能解析が可能となった。今後、ナガニシア酵母を用いたBRCA2の機能解析により、生命が遺伝情報を正確に維持するための分子機構の解明にとどまらず、ヒトの乳がん・卵巣がんの発症機構を理解する点においても重要な知見が得られると期待される。

本研究は、11月28日(日本時間)に科学雑誌「Life Science Alliance」のオンライン速報版で掲載された。