2023.11.07
オートファジーによる膜分解メカニズムを解明
30年間停滞していた研究が進展し脂質分解や代謝の理解に貢献
東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の籠橋葉子大学院生(研究当時。現:ポーラ化成工業株式会社 副主任研究員)、同 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターのメイ・アレキサンダー助教、堀江朋子助教、大隅良典特任教授らの研究チームは、オートファジーによる生体膜の分解酵素の実体が、液胞に輸送されて活性化されたホスホリパーゼAtg15であることを明らかにした。
オートファジーは広く真核生物に保存された自己分解システムで、細胞内の主要な脂質分解系でもある。生体膜は主にリン脂質から構成されているが、オートファジーによる生体膜分解のメカニズム解明はこれまでどの生物でも全く進展がなかった。
本研究は、リン脂質の分解を評価できる生化学的な手法を確立し、Atg15が基質特異性の低いホスホリパーゼBタイプのリパーゼであり、オートファジーによる膜分解の責任酵素であることを初めて見出した。同時に、Atg15の活性化には液胞内のプロテアーゼが必須であることを生化学的に示すことにも成功した。
本成果は、酵母でオートファジーが発見されて以来、30年間停滞していた膜脂質分解の研究を進展させた。細胞内の脂質代謝サイクルへの理解を深めるだけでなく、さまざまな代謝性疾患の研究にも役立つことが期待できる。
本成果は、「Journal of Cell Biology」に11月2日にオンライン掲載された。