Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.07.05

プレスリリース

マラリア原虫とヒトの概日リズムの同調メカニズムを発見

発症の分子機構を阻害する、新規抗マラリア薬の開発に期待

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の小林勇気助教(研究当時。筆頭著者)、今村壮輔准教授(研究当時。現 日本電信電話株式会社(NTT) 宇宙環境エネルギー研究所 特別研究員)、田中寛教授(責任著者)、東京都医学総合研究所 細胞膜研究グループの小松谷啓介研究員(筆頭著者と同等貢献)、東京大学大学院 医学系研究科の野崎智義教授、渡邊洋一准教授、マレーシア・サバ大学の佐藤恵春准教授、イギリス・ジョンイネス研究所のAntony N. Dodd教授、長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北潔教授らの研究グループは、ヒト体内で概日リズム制御に関わるホルモンであるメラトニンが、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の増殖に必須で固有のゲノムを持つ細胞内小器官、アピコプラストにおける遺伝子発現を活性化することを発見した。

私たちヒトは24時間周期で振動する概日リズムを持ち、マラリア原虫も独自の概日リズムを持っている。しかし、感染前には別々に振動していた各々のリズムが、感染後に同調して周期的なマラリアの症状を引き起こす仕組みはこれまで理解されていなかった。今回の発見で、ヒトとマラリア原虫のリズム同調に関わるメカニズムの一つが明らかになり、この情報伝達のかく乱もしくは阻害による抗マラリア薬開発の可能性が示された。

この研究成果は、7月3日付の「Proceedings of National Academy of Sciences of United States of America(米国科学アカデミー紀要)」にWeb掲載された。

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