Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.06.19

プレスリリース

軽くて柔らかな基板を用いた宇宙で大きく展開可能なフェーズドアレイ無線機を実現

軽量・小型化で衛星打ち上げコストを大幅に削減

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の白根篤史准教授と同 工学院 電気電子系の岡田健一教授、機械系の坂本啓准教授は、フレキシブル液晶ポリマー(LCP)基板を用いた宇宙展開型フェーズドアレイ無線機の開発に成功した。

より高速かつ安価な衛星通信サービスの提供を目指す衛星コンステレーションでは、衛星の小型・軽量化による打ち上げコストの削減が求められている。それにはアンテナを折りたたんで打ち上げる展開型無線機が必須だが、リジッド基板を用いた無線機では重量が重く、収納率も低くなるという課題があった。

本研究では、東工大において開発したCMOS無線ICチップを、厚さの異なる層構成をもつLCP基板上に実装して、Ka帯64素子フェーズドアレイ無線機を作成した。本無線機のLCP基板には厚い領域と薄い領域があり、この厚い領域にアンテナや無線ICを搭載し、薄い領域には高周波伝送線路を通す構成を採用した。この構成により、フェーズドアレイ無線機の求める多層構成による高密度化と、宇宙展開構造の求める柔らかく折り曲げやすい形状という2つの条件を両立することが可能となった。試作したフェーズドアレイ無線機は、±50°のビームステアリングが可能で、DVB-S2Xにおける256 APSK変調に対応し、12 Gbpsの通信速度を達成した。さらに本無線機の重量は、従来のリジッド基板の無線機と同じ面積で比較すると4分の1以下であり、大幅な軽量化を実現している。

研究成果の詳細は、6月11日から米国サンディエゴで開催される国際会議IMS 2023「International Microwave Symposium 2023」で発表された。