Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.06.07

プレスリリース

柔軟なエピゲノムがクロマチン構造を維持する

クロマチン構造の頑健性を保つバックアップシステム

東京工業大学 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターの志見剛特任准教授(研究当時)、木村宏教授、理化学研究所(理研)開拓研究本部眞貝細胞記憶研究室の福田渓客員研究員、志村知古テクニカルスタッフI、眞貝洋一主任研究員らの共同研究グループは、高次クロマチン構造の形成における抑制性クロマチン修飾の意義を多面的に明らかにしました。

本研究成果は、老化に伴う細胞機能の低下・不全にヘテロクロマチン状態の変化が重要な役割を果たすとされる機構を理解する上で重要な知見です。

多細胞真核生物のゲノム情報は、転写活性化状態にあるユークロマチンと転写抑制状態にあるヘテロクロマチンに分かれて核内に格納されています。体細胞におけるヘテロクロマチンの大部分は、ヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)のメチル化(特にトリメチル化)により覆われています。

今回、共同研究グループはH3K9メチル化を完全に欠損したマウス繊維芽細胞の確立に成功しました。H3K9メチル化を欠損するとエピゲノム状態がダイナミックに変化し、別の抑制性クロマチン修飾であるヒストンH3の27番目のリジン(H3K27)トリメチル化がヘテロクロマチンを覆い、ヘテロクロマチンの核内局在、凝集、転写抑制など、ヘテロクロマチン形成におけるH3K9メチル化の機能を代替することで、ヘテロクロマチンを維持することが分かりました。

本研究は、科学雑誌「Nucleic Acids Research」オンライン版(5月13日付)に掲載されました。

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