Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.06.01

プレスリリース

10^5個以上の菌株を数日で選別するタンパク質分泌生産株ハイスループットスクリーニング法を開発

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の北口哲也准教授と同 生命理工学院 生命理工学系の伊藤良浩大学院生(研究当時)らの研究チームは、味の素株式会社と共同で、バイオ医薬品など有用タンパク質を高分泌生産する微生物株の迅速な作出を可能とする新規ハイスループットスクリーニング手法の開発に成功した。

バイオ医薬品の製造においては、コストが安価であること、動物由来成分を含まないなどの利点から微生物にタンパク質を分泌生産させる手法が広く用いられている。一方で、タンパク質を高分泌生産する産業用微生物株の作出には、タンパク質分泌生産に寄与する多くの遺伝子改変の導入が必要であり、開発期間が長期に及ぶことが課題であった。

今回研究グループでは、さまざまな遺伝形質の微生物株からなる大規模ライブラリを、マイクロドロップレットを用いて超並列にシングルセル培養し、バイオセンサーであるQuenchbody/Q-bodyによってドロップレット内で分泌生産された目的タンパク質を蛍光シグナルとして検出・選別することで、タンパク質高分泌株を迅速にスクリーニングすることに成功した。

このスクリーニング手法を用いて、約105個の突然変異株群の選別を、従来は不可能であった数日という短期間で実現し、増殖因子の一種であるヒトFGF9の分泌生産量が約3倍に向上した微生物株を作出することに成功した。

この方法によれば、今後さまざまな有用タンパク質を高分泌生産する産業用微生物株の迅速な作出が可能となり、将来的にはバイオ医薬品の安価供給の実現が期待される。

本研究成果は、4月24日付の「Small(スモール)」にオンライン掲載された。

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