Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.02.21

プレスリリース

低軌道衛星コンステレーションに向けた耐放射線Ka帯フェーズドアレイ無線機の開発に成功

高速通信可能な衛星搭載用無線機の低コスト化に貢献

東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の白根篤史准教授と同 工学院 電気電子系の岡田健一教授、戸村崇助教および株式会社アクセルスペースは、放射線センサ搭載の新たなフェーズドアレイ
ICを用いて、耐放射線Ka帯フェーズドアレイ無線機を開発することに成功した。

フェーズドアレイ無線機は、地上と衛星の間および衛星と衛星の間の通信の姿勢制御の競合を避けるために用いられるが、ICが衛星筐体外側のアンテナ近くに設置されるため、放射線耐性に課題があった。そのため本研究では、アレイ上のあらゆる位置での放射線劣化を検出することが可能なフェーズドアレイ無線機を考案した。この無線機では、たとえアレイ上の放射線劣化が一様でなくとも、無線機性能の劣化を補償することができる。

この耐放射線Ka帯フェーズドアレイ無線機のプロトタイプは、64素子のアレイアンテナと、シリコンCMOSプロセスで製造した16チップのフェーズドアレイICによって構成される。各ICは4つの放射線センサを搭載しており、64個の放射線センサが64個のアンテナ素子に対応する。無線機の基本特性の測定評価を行ったところ、Ka帯25.9 GHzから30.1 GHzで動作し、右旋・左旋の両円偏波において最大で8 Gbpsの通信速度を達成した。また、衛星搭載用低消費電力化を進めることで、1系統あたり2.95 mWという、最新のフェーズドアレイ無線機の5分の1以下にあたる低消費電力化に成功した。さらに、実際に放射線を無線機に照射することで、放射線センサによる性能劣化の検出と、検出値を用いた性能補償による2 dB以上の利得性能の改善を達成し、考案した技術の有効性を示した。

研究成果の詳細は、2月19日から米国サンフランシスコで開催される国際会議ISSCC 2023「International Solid-State Circuits Conference 2023」で発表される。