Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.01.23

プレスリリース

タンパク質合成過程での中断リスク「リボソームの不安定化」は、原核生物と同様に真核生物でも見られることを発見

「リボソームの不安定化」を避けることで安定したタンパク質合成が可能に

東京工業大学 科学技術創成研究院の茶谷悠平特任助教、丹羽達也助教、田口英樹教授、同大学 生命理工学院の伊藤遥介大学院生(研究当時)、山川絢子大学院生、兵庫県立大学 大学院工学研究科の今高寛晃教授、町田幸大准教授らのグループは、遺伝情報をもとにさまざまなタンパク質を合成する「翻訳」の際、負電荷アミノ酸に富んだアミノ酸配列の翻訳時には、翻訳の連続性が破綻してしまう「リボソームの不安定化」現象が、原核生物だけでなく出芽酵母をはじめとした真核生物でも発生していることを明らかにした。

細胞内装置であるリボソームは、DNAからメッセンジャーRNA(mRNA)に転写された遺伝情報をもとにさまざまなタンパク質を合成する(生命のセントラルドグマにおける「翻訳」過程)。その際、タンパク質の設計図であるmRNAを最初(開始コドン)から最後(終止コドン)まで連続的に読み取る必要があり、読み取りが途中で中断すると設計図通りのタンパク質を生み出せなくなってしまう。本研究グループは以前に、原核生物において、負電荷アミノ酸に富んだアミノ酸配列の合成過程で「リボソームの不安定化」現象が起こって翻訳の途中中断のリスクがあることを見出していたが、本研究によって、出芽酵母やヒトなどのタンパク質合成過程でも、合成産物による翻訳の途中終了が発生していることを明らかにした。また、途中終了のリスクが高まる翻訳開始直後では特定のアミノ酸の使用を避ける傾向が大腸菌からヒトに至るまで幅広い生物で見出された。このことは、「リボソームの不安定化」現象が合成装置リボソームを利用する地球生命の遺伝子発現の基本原則の一つとなっている可能性を示唆している。

本研究成果は、欧州Nature Portfolioが発行する総合誌「Nature Communications」のオンライン速報版で2022年12月2日に公開された。