Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2023.01.12

プレスリリース

熱電変換性能を左右する分子-電極界面構造を解明

優れた有機熱電変換材料開発へ弾み

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の田中裕也助教と韓国高麗大学のユンヒョジェ教授らの研究チームは、有機物と金属錯体を組み合わせた有機金属錯体単分子膜の熱電変換性能を測定し、単分子膜材料として世界最高性能のゼーベック係数(熱電変換材料の性能指数の一つ)を示すことを明らかとした。金属錯体の数を増やすことでゼーベック係数が増大することも見いだした。また高い耐熱性を示し、熱電変換材料としても広範な温度範囲での駆動が可能であることがわかった。

熱電変換は廃熱を電気エネルギーへ変換することが可能であることから環境調和型のエネルギー源として注目されてきた。これまでは無機化合物が熱電変換材料として用いられてきたが、軽量性、安全性の観点から有機化合物への代替に近年注目が集まっている。電極と有機材料の界面構造が熱電変換材料の性能に重要な役割を果たしており、単分子膜の熱電変換材料を調査することでこれを明らかとすることができる。一方、熱電変換材料の性能指数の一つであるゼーベック係数は分子構造に関わらず小さい値に留まっており、分子設計の確立が課題であった。本研究ではこれまで着目されてこなかった電子豊富な有機金属錯体の単分子膜を用いた熱電変換材料を開発した。さらに、金属錯体の数と有機配位子の構造を変えることで劇的にゼーベック係数が増大することを見いだした。本研究により、さらなる有機熱電変換材料の性能向上が見込まれる。

本研究成果は、東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 田中裕也助教、韓国高麗大学のパクソユン博士、ジャンジウン大学院生、ユンヒョジェ教授らによって行われ、11月28日付の「Nano Letters」に速報版として掲載された。