Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.11.08

プレスリリース

光が当たると光合成酵素が活性化する分子メカニズム

酸化還元制御システムの必須性を解明

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の吉田啓亮准教授と久堀徹教授らの研究チームは、植物に光が当たった時に光合成反応を支える酵素群が活性化されるしくみを明らかにした。

植物の光合成機能は、光環境の変化に合わせて柔軟かつ精密に調整されており、そのメカニズムの解明は今日の植物生理科学の中心的課題のひとつである。吉田准教授らは、この光合成の制御メカニズムの解明に向けて、光合成反応を支える酵素(タンパク質)の酸化還元制御に注目した。この酸化還元制御システムの情報伝達経路については、半世紀近く前に具体的な経路が提案されていたが、この経路が植物体内で実際に作用していることを示す明確な証拠はなく、植物にとってどれほど重要なのかも明らかにされていなかった。

今回の研究では、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を活用して、この情報伝達経路の機能を抑制した変異株植物を作成することで、酸化還元制御システムが光に応答して酵素を活性化させる分子メカニズムを解明した。さらに、この経路を含めた酸化還元制御システムが実際に、植物の光合成や生育に極めて重要な役割を果たしていることを明らかにした。この成果は、農作物の光合成機能や生産性の向上といった今後の応用展開のための重要な指針になると期待される。

本研究成果は、10月27日付の「Journal of Biological Chemistry」に掲載された。