2022.07.26
トンネル構造をもつマンガン酸化物のナノ粒子触媒を合成
触媒・電極材料・吸着材への応用に期待
東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の鎌田慶吾准教授と原亨和教授らは、多孔質化や微粒子化に必要な特殊な試薬を一切用いることなく、世界トップの表面積をもつトドロカイト型マンガン酸化物OMS-1のナノ粒子触媒の合成に成功した。このナノ粒子触媒を用い、溶媒や合成中間体として有用なカルボニル化合物やスルホキシドへの直接酸化反応を実現した。
大きなトンネル構造をもつOMS-1は、触媒だけでなく電極材料や吸着材としても注目されている。しかし従来の合成法(水熱法)は長時間の水熱処理を必要とする多段階プロセスであるため、ナノサイズでの構造制御が困難であった。研究グループは、Mgイオンを導入した層状マンガン酸化物前駆体の固相転移反応に着目し、極めて大きな表面積をもつ多孔質OMS-1ナノ粒子を簡便かつ効率的に合成した。さらに本研究で開発した触媒が、常圧酸素を用いたアルコールやスルフィドの酸化反応を促進し、その活性は従来のマンガン酸化物触媒よりも高いことを実証した。
新しい手法で合成されたナノ粒子は、温和な条件でのケミカルズ合成触媒だけでなく、二次電池の電極への応用なども期待され、カーボンニュートラルな社会構築に貢献する材料となりうる。
研究成果は2022年7月20日(現地時間)に米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン速報版で公開され、同学会誌のSupplementary Coverに採択された。