Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.03.07

プレスリリース

哺乳類の胎盤獲得に至る分子進化プロセスの一端を解明

進化学の発展や、妊娠時の異常診断・治療への応用にも期待

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系のベニ・レスタリ(Beni Lestari)大学院生、内藤聡美大学院生、同 科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センターの福嶋俊明助教らの研究グループは、タンパク質リン酸化酵素(プロテインキナーゼ)の一種であるNIK-related kinase(NRK)が哺乳類の祖先で大規模かつ急速な分子進化を受け、胎盤形成に重要な役割を果たすようになったことを突き止めた。

本研究グループのこれまでの研究で、胎盤に特異的に発現するNRKが胎盤の過形成を防ぐことがわかっていた。今回の研究では、哺乳類の出現以前から存在していたNRKの機能が、鳥類から哺乳類への進化の過程で大規模かつ急速に変化したことを示す証拠を見つけた。この分子進化によって獲得した複数の配列を利用して、NRKが細胞増殖を促すタンパク質の働きを抑えることで、胎盤の発達を制御していることも、本研究によって明らかとなった。この結果は、胎盤形成と関わりのなかった祖先型NRKが分子進化によって新規機能を獲得し、胎盤形成の制御に転用されたことを示している。

本研究成果は英国の科学誌「Molecular Biology and Evolution」に2月24日(現地時間)に掲載された。