Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2022.02.03

プレスリリース

理想とされるC-H結合の直接酸化反応を低温・高効率で達成

化学合成プロセスの著しい簡潔化に寄与する触媒を開発

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の鎌田慶吾准教授と原亨和教授らは、温和な条件で芳香族炭化水素のC–H結合を酸化できる触媒として、ありふれた元素であるマグネシウムとマンガンからなるムルドカイト型複合酸化物Mg6MnO8のナノ粒子を開発した。

酸素分子のみを酸化剤とした不活性C–H結合の直接酸化は、多段階反応・特殊な試薬の使用など化学合成産業が抱える環境問題・エネルギー問題の解決のための技術として注目されている。しかし従来触媒では炭化水素のC–H結合を酸化するには特殊な酸化剤や添加剤・厳しい反応条件が必要であり、エネルギー消費が大きかった。今回開発した触媒は酸化マグネシウム(MgO)由来の強い塩基性とMn4+の強い酸化力の共同効果により、40℃・常圧酸素という温和な条件でも反応が進行し、その活性は、高活性な二酸化マンガン触媒を含む従来触媒よりも高いことを実証した。

開発された触媒は16種類の芳香族化合物の酸化反応に適用でき、化学工業プロセスの簡略化による消費エネルギー低減に寄与できるものと考えている。

研究成果は2022年1月26日(現地時間)に米国科学誌「ACS Applied Materials & Interfaces (エーシーエス・アプライドマテリアルズ・アンド・インターフェイシーズ)」オンライン速報版で公開された。