Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.10.22

プレスリリース

岡山県産鉱物「逸見石」が示す新奇な磁性

特徴的な結晶構造が量子力学的なゆらぎを生み出す

日本ではこれまで140種類を超える多くの新鉱物が発見されていますが、サンプルの稀少さから、固体物理学の視点で物性研究をした例は多くありません。東京工業大学 科学技術創成研究院の東正樹教授、重松圭助教(以上2名は神奈川県立産業技術総合研究所併任)、東北大学 多元物質科学研究所 山本孟助教、坂倉輝俊助教、木村宏之教授らの研究グループは、岡山県高梁市布賀鉱山で産出する逸見石が量子力学的なゆらぎの強い磁性体であることを、放射光や理論計算、極低温物性測定を用いて発見しました。高い精度で結晶構造を解析できる放射光X線回折により、逸見石が従来の報告とは異なる結晶構造を持つことが明らかとなりました。今回決定した結晶構造と理論計算から、逸見石は量子力学的なゆらぎが強く現れる磁気スピン格子の性質を持つことが分かりました。この発見は、稀少さのために磁性研究の舞台に上がることが少なかった「日本産新鉱物」に注目するという、新しい視点を持った研究成果です。
本成果は10月13日(米国時間)にPhysical Review Materials誌でオンライン公開されました。

同研究グループには他に、岡山大学 異分野基礎科学研究所Harald O. Jeschke特任教授、東北大学 壁谷典幸助教、落合明名誉教授、野田幸男名誉教授、福井大学 遠赤外領域開発センター、石川裕也助教、藤井裕准教授、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所 佐賀山基准教授、岸本俊二特別教授が参加しました。