2021.10.15
フェムト秒の光パルス照射で縦波光学フォノンをコヒーレント制御する、量子力学に基づく理論を構築
拡張されたモデルで偏光依存性の再現が可能に
東京工業大学 物質理工学院 材料系の高木一旗大学院生(修士課程2年)と、科学技術創成研究院の中村一隆准教授、萱沼洋輔特任教授は、理論計算を通じて位相と偏光を制御したフェムト秒(1,000兆分の1秒)時間幅の2つの光パルス照射によって、縦波光学フォノンの干渉をコヒーレント制御することを再現できる量子理論モデルを構築した。
本研究では、ガリウム(Ga)とヒ素(As)からなる半導体単結晶の縦波光学フォノンを考察対象として、エネルギー準位における振動準位および電子準位に焦点を当てた新たなモデルを考え、位相と偏光を制御した2つの光パルス照射によって起こる光応答過程を計算した。照射により生成された縦波光学フォノンの振動振幅を、パルス遅延時間の関数として求める手法を取った。
この計算によって得られた電子とフォノンの干渉の割合と形状を検討したところ、干渉のあり方が照射される光パルスの偏光角度と結晶方位に依存していることが明らかになった。特に、直交偏光でパルスの一方を、Ga原子同士を結ぶ方向に平行な[100]方向にすると、パルス照射で生じる光による干渉の影響なしに、電子における量子干渉を観測できることを示した。
本研究成果は10月1日に、米国物理学会誌「Physical Review B」のオンライン版に掲載された。