Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.10.04

プレスリリース

巨大負熱膨張のメカニズムを解明

さらなる新材料の設計に道を拓く

東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所のLei Hu(レイ フ)研究員、東正樹教授、名古屋大学の竹中康司教授、神奈川県立産業技術総合研究所の西久保匠、酒井雄樹の両常勤研究員らの研究グループは、層状ルテニウム酸化物において巨大負熱膨張の起源となっている結晶構造変化を解明した。

負熱膨張材料は、光通信や半導体製造装置などの構造材で、精密な位置決めをさまたげる熱膨張を補償(キャンセル)できる。還元処理した層状ルテニウム酸化物Ca2RuO4の焼結体は大きな負熱膨張を示すが、そのメカニズムはこれまで不明だった。本研究ではCa2RuO4の結晶構造変化を、電子線解析や放射光X線解析、第一原理計算などの方法で調べた。その結果、昇温に伴う結晶構造の歪みの解消や、結晶粒間の空隙の減少が巨大な負熱膨張につながっていることが明らかになった。

本研究で巨大な負熱膨張のメカニズムが解明されたことで、今後は、高価なルテニウムの代わりに安価な金属元素を用いた、同様の特性を持つ新しい負熱膨張材料の設計が期待できる。研究成果は9月24日に米国化学会誌「Chemistry of Materials」のオンライン版に掲載された。

研究グループには、東京工業大学のYue-wen Fang(ユゥエン ファン)研究員、Zhao Pan(ザオ パン)研究員、Hena Das(ヘナ ダス)特任准教授、福田真幸大学院生、中国北京航空航天大学のYingcai Zhu(インサイ シュ)研究員、高輝度光科学研究センターの河口彰吾主幹研究員、量子科学技術研究開発機構の町田晃彦上席研究員、綿貫徹放射光科学研究センター長、大阪府立大学の森茂生教授が参画した。