Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.09.27

プレスリリース

α-グルコシルルチンがヒトiPS細胞の代謝を活性化する作用機序を解明

幹細胞の機能解明や食品・化粧品への応用に期待

東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所の島田幹男助教、松本義久准教授とタカラベルモント株式会社の三宅智子研究員らの研究グループは、α-グルコシルルチンがiPS細胞の代謝を活性化する作用を持つことを明らかにした。

α-グルコシルルチンは、天然フラボノイド配糖体であるルチンの誘導体であり、ルチンよりも水溶性が高い。そのため、食品や化粧品の抗酸化剤、着色剤として使われてきたほか、放射線防護作用を持つことが報告されている。しかし、幹細胞に対する作用はこれまで明らかになっていなかった。

今回の研究では、線維芽細胞、iPS細胞由来ケラチノサイト、iPS細胞について、α-グルコシルルチンによる細胞応答を比較解析した。その結果、iPS細胞では、α-グルコシルルチン処理によって最初期遺伝子(immediate early gene; IEG)応答が起こり、細胞内代謝が一過性に増加することを発見した。これは幹細胞に対するα-グルコシルルチンの作用機序を明らかにした初めての例であり、幹細胞の多能性維持や細胞内代謝制御機構の解明だけでなく、食品や化粧品など様々な分野への波及効果が期待される。

本研究はタカラベルモント株式会社と共同で実施し、研究成果は米国国際科学誌「Stem Cell Research」電子版に8月20日に掲載された。