Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.08.23

プレスリリース

金属原子の位置をヒントに複雑な高分子の立体構造を解明

新たな立体構造の解析手法として高分子材料の設計などに期待

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の高田健司研究員(研究当時)、今岡享稔准教授、アルブレヒト建助教(研究当時)、山元公寿教授らの研究グループは、金属原子の位置を決定できる原子分解能を持った電子顕微鏡を用い、観察された画像を基に、高分子の複雑な立体構造を1分子レベルで解明する手法を開発した。

有機高分子材料は、包装容器から電子材料まで、社会の広範な分野で用いられている。その開発を進めるには、高分子を構成する分子一つ一つについて精細な立体構造を把握し、どう機能を発現するかのメカニズムを理解する必要がある。しかし一般的に高分子の立体配座は刻一刻と変化するため、これまで高分子の複雑な立体構造をサブナノメートルの精度で解明する方法は存在しなかった。

本研究では、イリジウム多核錯体の高分子を、原子分解能を持つ電子顕微鏡で観察した。高分子中に固定された金属原子の位置を手がかりとしながら、顕微鏡観察で得たスナップショットイメージと、理論計算によるシミュレーションイメージを定量的に比較することにより、高分子錯体分子の瞬間的な立体構造を決定した。

高分子の詳細な立体構造の解析を可能とした本手法により、これまでは未解明だった、高分子材料における構造-機能相関の解明や、新たな高分子材料の設計・開発につながることが期待される。

研究成果は2021年8月6日(米国東部時間)に米科学会誌「Science Advances」オンライン版に掲載された。