Institute of Innovative Research, 
Tokyo Institute of Technology.

2021.07.06

受賞

科学技術創成研究院の助教3名があすなろ研究奨励金に採択

山田哲也 助教、邱琬婷 助教、竹原陵介 助教が、あすなろ研究奨励金に採択されました。

あすなろ研究奨励金は、理工学に関する基礎・基盤的研究(理学分野の研究だけではなく、成熟した工学分野における地道な研究や、流行にとらわれず長期的視点に立って新しい可能性に挑戦する研究、独創的であっても研究費が取りにくい工学分野の研究を含む。)における研究者に対して、研究費支援を行うものです。

受賞先:  東京工業大学
賞: 2021年度あすなろ研究奨励金
受賞日: 2021年7月6日(火)

 

山田哲也助教 研究概要

固体でイオンを通すことのできるイオン伝導体は電池や化学センサなどさまざまな用途で使用される重要な材料です。このイオン伝導体のサイズをナノレベルまで小さくしたときに、通常の大きさのものと比べて高いイオン伝導特性が見られる場合があります(ナノイオニクス現象)。このナノ空間で発現する高速イオン伝導の空間的な条件とそのメカニズムはいまだ謎が多いのが現状です。
本研究では、酸素イオン伝導体であるジルコニア(ZrO2)の単結晶ナノシートを利用し、高速イオン導電特性を発現させるメカニズムの解明とそのナノイオニクス現象が発現する条件を明らかにします。2次元構造を持つナノシートを用いるメリットは、基板への成膜のしやすさとナノ電極の取り付けやすさにあります。ナノシートのサイズを変えることで、2次元に制約されたナノ空間条件とイオン伝導の関係を調べることが可能になると考えられます。

受賞者: 山田 哲也 助教(融合メカノシステム研究コア)
研究課題名: 2次元ナノシート内で発現する高速イオン導電現象の探求

 

邱琬婷助教 研究概要

強磁性形状記憶合金(Ferromagnetic Shape Memory Alloy; FSMA)は磁場により、形状変形や磁性体の内部自由度等を制御できるため、ロボット用の高速アクチュエータ材、磁気冷却材として注目されている。NiMnGa合金は有望な強磁性形状記憶合金であるが、高脆性で実用できないという課題があった。本研究では、意図的に分散相(S、Bi元素等)をNiMnGa合金に導入し、より高脆性の合金を作製したうえで、さらに高温によって分散相を液体化させ、機械的に合金材料を粉砕する。本技術では、従来材の高欠陥や単結晶化の困難等の問題点を解決できる。また、その単結晶NiMnGa粒子を使用した複合材料を創製し、効率的で環境に優しい未来の高速アクチュエータ材、冷凍技術の実現に向けて研究に取り組んでいる。

受賞者: 邱 琬婷 助教(先端材料研究コア)
研究課題名: 分散相による欠陥極小化NiMnGa合金粒子/ポリマー複合材料の変形特性の向上

 

竹原 陵介 助教 研究概要

近年、物性物理学の分野ではトポロジーに関する研究が盛んに行われているが、この概念が初めて導入されたのは2次元系における渦構造であった。この渦は超伝導、超流動薄膜などで発見されてきたが、電気双極子モーメントを構成要素とした電気的な渦構造は未だ見出されておらず、そもそもそれを実現するような物質の実現が困難であった。しかし近年、三脚型分子を足場として、その上部で電気双極子モーメントが回転する分子ローターが開発された。この分子は三脚型分子が入子状に2次元的に配列することにより2次元分子ローター系を実現するが、これはまさに初めて渦が考えられられた系と同じ構造をなしている。そこで本研究では分子ローター集合体を対象に初の電気的2次元渦構造の観測を試みる。また、渦が電気的なものであるために、電場による直接制御も期待され、これらの実現はトポロジーの分野に新たな知見を与える。

受賞者: 竹原 陵介 助教
研究課題名: 分子ローター集合体が生み出すトポロジカル構造とその外場応答